リプロダクトチェアブログ

2025/08/27 08:50

イームズといえば、シェルチェアのようにリビングで映えるカラフルで有機的な形のチェアを思い出すことでしょう。しかし実は、それ以外にも「アルミナムグループチェア」というオフィスチェアの原点と呼ばれる傑作も生みだしています。
オフィスの格を上げる、シャープで洗練された「アルミナムグループチェア」の魅力と、優れたリプロダクト品についてご紹介します。

エグゼクティブチェアのリプロダクト品

オフィスチェアに必要な機能をゼロから考えたチェア

1958年、デザイナーであるチャールズ&レイ・イームズ夫妻によって「アルミナム グループチェア」が生み出されました。このチェアは、ある豪邸の屋外用家具としてデザインを依頼され開発されたもので、初めからオフィス用としてデザインされたものではありませんでした。しかし、その革新的なデザインと機能性は、当初の目的に収まらず、世界中の建築家や経営者の間で注目を集め、オフィスチェアの原点となります。

原点と呼ばれるのは、次にあげる5つの機能を備えており、この機能は現代でもオフィスチェアに求められる機能そのものだからです。

張力で支える構造
リクライニング機能
高さ調節機能
キャスター
回転機能

張力で支えるチェア

最大の特長は、アルミダイキャストのフレームに皮の生地がピンと張られ、その張力によって身体を支える構造です。

長時間座る椅子ですから、座面が固すぎるとお尻が痛くなってしまいますし、柔らかすぎると体が沈み込んでしまい、腰に負担がかかってしまいます。
張力によって支えることによって、体をしっかりと固定しながらも、たわむことによって身体を包み込むように優しく支えます。

体重を支える構造の要でありながら、アルミダイキャストのフレームは、流れるように美しい曲線を持ち、軽やかで洗練された印象を与えます。これによって、重みのある家具で飾られた重厚なオフィスにも、ガラスから光を取り込む軽やかなオフィスにも馴染む、オフィスチェアとしての汎用性を備えています。

1つだけ注意点があるとすれば、現代のオフィスチェアは、非常にクッション性のある座面になっていることが多く、アルムナムグループチェアの座面を、少し硬いと感じるかもしれません。ただ、これは慣れの問題で、すぐに馴染んでくるでしょう。

オリジナル品の座面


まさかのリクライニング機能

「1950年代にデザインされたイスなのに!」とびっくりする機能が、リクライニング機能です。オフィスでふと緊張から解放されたとき、あるいは行儀悪く足をデスクに投げ出しふんぞり返るとき、リクライニング機能が必要です。
リクライニング機能は、体重をかけると後ろに倒れ、体重をかけないと前に傾きが戻るようになっています。エグゼクティブチェアには、この機能の「硬さ」を調節するねじがついていて、体重などが違っていても、それぞれが心地よいもたれ方に合わせることができるようになっています。

このリクライニング機能に関して、オリジナル品とリプロダクト品の違いが2つあります。
まず1つ目。オリジナル品は、硬さを調節するネジが後ろ側についています。一方、リプロダクト品は前側です。

機能としては、ねじの締め付けを変化させることで、リクライニングの方さを調節している、全く同じ機能を持っているはずですが、正規品は正面から見た姿がスッキリするように、この機能を後ろに回しています。一方、リプロダクト品は、座面より下の見た目は割り切ることで、機構を簡単に、安く作れるようにしていると思われます。
また、リプロダクト品は、このリクライニング機能をON/OFFするレバーを設けています。座面よりも下の見た目を割り切ることによって、追加の機能も設けられるようになっています。リプロダクト品ならではの良さと言えます。


高さ調節機能

アルミナムグループチェアには、座面の高さを調節する機能があります。デスクワークで長時間座るため、適切な高さでないと、腰や脚に負担がかかってしまいます。

現在は、ガス圧シリンダー式と言う、レバーの調節で簡単に上げ下げできる方法が主流です。
アルムナムグループチェアがデザインされた当時、この技術がなかったため、高さ調節機能を、シリンダーそのものを回転させることで実現させています。

この方式は手間はかかりますが、シリンダーの周りに余計なものが付属せず、イスの形をスッキリと見せてくれます。
リプロダクト品はガス圧シリンダー式を採用しており、より便利に進化していると言えます。

キャスター

キャスターは5本足の形をとっています。奇妙な数に思えるかもしれませんが、オフィスチェアの多くが5本足を採用しています。4でも6でもなく、「5」という数字になった理由は、倒れにくさと動きやすさのバランスです。

4本足だと、横や後ろに倒れやすくなりますが、5本足ならよほど意図的に傾けないと倒れません。一方、6本足にしてしまうと、摩擦が大きくなり動きづらくなります。オフィスチェアは、静止して使うことが多いですが、座ったまま少し移動したいという場面も多く、動きづらさは使いづらさにつながってしまいます。

オリジナル品はキャスターのタイヤの部分が光沢のある金属に覆われていて、一方リプロダクト品は艶消しのような金属になっています。


回転する座面

座面の回転機能の歴史は実はけっこう古く、アルムナムチェアよりもはるか以前からありました。アメリカの第3代大統領トーマス・ジェファーソンが多忙な執務のために、自ら回転する椅子を考案したという逸話もあります。彼が使っていたとされる回転椅子は、1776年頃に製作されたと言われています。
オフィスチェアにおいては、シリンダー構造を採ることで、滑らかな回転を実現しています。
(画像)

オリジナル品に近いリプロダクト品のすばらしい出来栄え

オリジナル品とリプロダクト品は、非常に近い形をしています。計測したサイズの差はわずかで、1cm以内に収まります。張地はレザーではなく、合皮ですが、質感のある素材ですので、決してチープに見えることはありません。
イームズ夫妻がこだわった、アルミダイキャストの流れるような美しいフレームを忠実に再現しており、オフィスに品格をもたらしてくれます。執務室のチェアとしても、会議室のチェアとしても、仕事のモチベーションも、効率性も高めてくれる存在になるはずです。
手前がリプロダクト品、奥がオリジナル品

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