2023/12/20 11:52
リプロダクトチェアを買うことはやましいこと?
リプロダクトチェアは、意匠権が切れたデザインを採用したイスのことです。
オリジナルのデザインを盗用しているのではなく、オリジナルの設計図やデザイン要素を忠実に再現しながらも、しばしば現代の製造技術や材料を活用しています。
これにより、オリジナルの美学と機能性は保持されつつ、耐久性や快適さが向上している場合が多いのです。こうした点から、リプロダクトチェアは「偽物」というよりは、オリジナルを敬愛し、より幅広い層に受け入れられる形で再解釈された製品と言えます。
例えば、アルネヤコブセンの名作セブンチェアを再現したリプロダクト品では、セブンチェアの弱点であるマウント部分に故障が起きないように正規品とは違うデザインが施されています。
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リプロダクト品は「ロッチ」なのか?
1980年代にロッテから発売された「ビックリマンチョコ」が大流行しました。今でいうトレーディングカードのようなもので、お菓子に同梱されているキャラクターシールが大人気になったのです。中でもきらきら光る希少なキャラクターのシールは憧れの的になり、「キラキラ」を求めてお菓子を箱ごと買う行為も見られました。
この時、「ロッテ」ではなく「ロッチ」のシールが発売されました。ロッテではないものの、ロッテに見間違える「ロッチ」のシールは、お菓子に同梱ではなく、カプセルトイで販売されていました。「キラキラ」を簡単に手に入れることができる近道だったのです。
その後ロッテに訴訟をされ、ロッチはなくなってしまう運命をたどります。
↓「ロッチ」については、文春オンラインにまとまっています。
https://bunshun.jp/articles/-/8403
リプロダクトチェアは、このロッチとは全く違うものです。
なぜなら、ビックリマンのシールは、「所有する」ことだけを目的にしたものであるのに対して、リプロダクトチェアは「使う」ことを目的にしたものであるからです。
所有することを目的にした場合、正規の商品であることに価値が置かれます。
ビックリマンのシールの場合、ロッテのキラキラを持っていることに意味があります。デザイン家具のコレクターであるならば、ハーマンミラー社のシェルチェアを所有することには、確かに特別な価値があります。
しかし、イスには所有するだけでなく使うという主目的があります。
リプロダクトチェアは、オリジナルのデザインを尊重しながらも、はるかに手頃な価格で提供されます。使用することに主眼を置けば、リプロダクト品はコストパフォーマンスの高い選択肢となるでしょう。そして、正規品よりも進化した点があることもあるのです。
家具愛好家の間でのリプロダクト品の位置づけ
家具愛好家のコミュニティでは、リプロダクト品に対する見方は様々ですが、リプロダクト品を選ぶこと自体がタブーとされることはありません。実際、多くの愛好家はコスト、利用目的、実用性を重視し、リプロダクト品を選ぶことがあります。デザインの本質を理解し、それを自分のライフスタイルに合わせて享受することは、デザインを愛する人々にとって重要なことです。リプロダクト品を選ぶことは、このような愛好家の間では実用的かつ合理的な選択として認識されています。
伊勢丹のヴィンテージ家具を紹介する動画の中で、リプロダクト品を持っているというコメントが出てきますが、特にそれをタブー視することはなく、「それはそれ」という位置づけになっています。
リプロダクトチェアの選択は、単に経済的な選択だけではなく、デザインと実用性のバランスを考慮した賢明な決断です。オリジナル品を尊重しながらも、より多くの人々が優れたデザインを日常生活に取り入れることができるようにすることは、デザインの民主化に貢献しています。リプロダクトチェアは、デザイン愛好家にとって、アクセスしやすい価格でクオリティの高い家具を手に入れるための優れた選択肢なのです。
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