リプロダクトチェアブログ

2024/04/24 16:15

国立新美術館は、乃木坂駅から坂を下りたあたりにある、故・黒川紀章氏による設計の美術館です。うねるガラスの外壁が特徴的です。この美術館は、都心のアクセスのよい場所にありながら、展示や建築そのものを楽しむ場として、非常に人気の高い場所です。

しかし実は、隠れた「イスの名所」でもあり、「デンマーク家具展示会」でもあります。
イスが好きな人なら、1日中楽しめるスポットです。

国立新美術館出所:Wikipedia
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=73770538

デンマークの名作イスが惜しげもなく置かれている

とにかくデンマーク家具が目白押しのこの美術館、フロアごとに観ていきましょう。
おすすめは、1階に到着したらまず3階までエスカレーターで上がり、3階から地下1階まで順にみていくコースです。

3階にある大量のセブンチェアに圧倒され、最後になかなか座る機会のないエッグチェアに包まれながらできる限りの時間を過ごすプランです。

フロア階施設名称デンマークの名作椅子
3階レストラン
「ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ」
セブンチェア
–レザー・白
ラウンジチェア(CH25)
2階カフェ
「サロン・ド・テ・ロンド」
Yチェア(CH24)
1階正面入口・東側ロビー
休憩コーナー
シェルチェア(CH07)
地下1階カフェ
「カフェテリア カレ」
ホール
アントチェア
エッグチェア
スワンチェア

公式サイトのフロアガイドはこちら

まずは3階から見ていきましょう。

国立新美術館3階にあるレストラン「ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ」にあるセブンチェア

3階(セブンチェア、ラウンジチェアCH25)

セブンチェア(アルネ・ヤコブセン)
超名作、レザー張りのセブンチェアが、3階のレストランに置かれています。このレストランは、ブラッスリー・ポールボキューズという名前で、ひらまつが運営しています。
セブンチェアといえば木の座面のものが一般的で、なかなかレザー製にはお目にかかることができません。滑らかな曲線を描くセブンチェアが、レザー製でどのような座り心地になるのか、とても貴重な体験です。
同じ階に、ウッド製のセブンチェアも置かれていますので、レザーとの感触の違いを感じてみるのもいいでしょう。

国立新美術館3階にあるレストラン「ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ」にあるセブンチェア

ラウンジチェアCH25(ウェグナー)
ヤコブセンと並ぶ家具デザイナー、ハンス・J・ウェグナーの作品、ラウンジチェアです。ラウンジチェアというとイームズを思い浮かべる人も多いかもしれません。CH25という製造番号でも知られています。
1950年に発表されてから現在に至るまで人気を博し、途切れることなく生産されている名作です。材料としてペーパーコードを使っています。ペーパーコードとは、紙に樹脂をしみこませたもので、軽い見た目のわりにしっかりした強度を持っています。座面と背もたれの両方にペーパーコードを使用し、耐久性を持ちながらも非常に軽やかなフォルムを生み出しています。

国立新美術館3階にあるレストラン「ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ」の向いにあるラウンジチェア

2階(Yチェア)

次に2階に降りると、ウェグナーのYチェアが迎えてくれます。1950年にカール・ハンセン&サンからCH24の製造番号で発売されました。実はよく知られている「Yチェア」という名前や、ウィッシュボーンチェアという名前は、ウェグナーの名づけによるものではありません。その特徴的な形状から俗称として呼ばれているものです。

国立新美術館2階カフェ「サロン・ド・テ・ロンド」にあるYチェア

このチェアは、中国・明代の椅子がデザインの原点となっています。その名の通り背板は単板を貼り合わせたY字型が特徴であり、円弧を描くアームなど斬新なデザインと快適な座り心地が特徴です。ペーパーコードの柔らかい座面で、心地よい時間を過ごすことができます。

国立新美術館2階カフェ「サロン・ド・テ・ロンド」にあるYチェア

1階(シェルチェアCH07)

国立新美術館ロビーにあるシェルチェア(CH07)

1階に移動すると、ウェグナーのシェルチェアCH07が目に飛び込んできます。このチェアは、1963年にデザインされました。羽を広げているようなフォルム、脚は先端に向かって細くなっている3脚。その曲線美とエレガントさが彫刻作品のようなデザインで置いてあるだけで存在感と空間のアクセントになります。背もたれは程よく傾斜が付けられていてゆったりと体重を預けながら座ることができます。座面の左右に余裕があるため、本を置いて過ごすこともできます。

国立新美術館ロビーにあるシェルチェア(CH07)

地下1階(アントチェア、エッグチェア、スワンチェア)

 最後に地下1階へと向かい、ヤコブセンのアントチェア、エッグチェア、スワンチェアを楽しんでみましょう。これらのイスはすべて、アルネ・ヤコブセンの作品です。

アントチェアは、1952年にデンマークの製薬会社ノボ ノルディスク の社員食堂のために作られた椅子です。「Ant(アント)」という名前は、滑らかな曲線で描かれたアリの頭のシルエットだけでなく、華奢な体で重いものを支えるという構造の強靭さからも来ています。
さらに食堂でスタッキングチェアとしても使える製品を目指して作られました。

国立新美術館下カフェ「カフェテリア カレ」にあるアントチェア

エッグチェアは、1958年にデンマーク、コペンハーゲンの「ラディソンSASロイヤルホテル」のロビー用にデザインした椅子です。当時、画期的な手法として発泡ポリウレタンを用いて有機的なシルエットを実現し、新たな家具の可能性を提示しました。卵を思わせるような形状からエッグチェアと名付けられ、包み込まれるようなリラックスした状態でくつろぐことができます。

国立新美術館地下のホールにあるエッグチェアとスワンチェア
国立新美術館地下のホールにあるエッグチェア

スワンチェアはエッグチェアと共に「ラディソンSASロイヤルホテル」ロビーとレセプションエリアようにデザインした椅子です。世界初の硬質発泡ポリウレタンによる成型は家具は、全てを曲線で構成する自由な創作を可能にしました。白鳥の羽根を思わせる左右のアームが特長です。美しいフォルムと快適な座り心地です。

国立新美術館地下のホールにあるスワンチェア

実はスワンチェアは、3階のポール・ボキューズでも見ることができます。
でもおすすめは、エッグチェアとスワンチェアの座り比べです。ぜひ地下1階でエッグチェアとスワンチェアを行ったり来たりしながら座ってみましょう。

国立新美術館3階にあるレストラン「ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ」にあるセブンチェア

最後に

国立新美術館は、展示を見に来る人だけでなく、実はイスを見に来る人も多くいます。
ですので、試しに座りたいと思っていても、目当てのイスが座っている人で埋まっているということも考えられます。できるだけすいている時間帯を狙っていくことをお勧めします。
火曜日を除く平日と土日の18時まで開館しているのですが、金曜と土曜だけは20時まで空いています。金曜と土曜の18時以降は比較的すいているようですので、ここを狙っていくのがおすすめです。

また、100円を入れて100円戻ってくるロッカーがありますので、荷物を置いてゆっくり回ることをお勧めします。

ぜひデンマークの名作を次々に座れる国立新美術館を楽しんでください。

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