2024/03/25 17:12
リプロダクト品は合法的な商品
リプロダクト品のことを、悪質なコピー品と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、いわゆる「コピー品」とは全く違うものです。
コピー品と呼ばれるのは、一般的に正規ブランドに何の合意もなくデザインやロゴを模倣した、違法な商品です。例えば、私の母親はアジアのとある国に旅行した際に、露店でシャネルのロゴが入った靴下を、500円で買ってきました。これは明らかに違法なコピー品です。シャネルが露店を出しているはずはなく、ロゴを勝手に使っただけの商品であることは明らかだからです。
一方、リプロダクト品はロゴや商標を使いません。デザインだけを継承します。
デザインは合法的に継承することができます。そのデザインが世に出てから25年経つと、デザインを守る権利である意匠権が消失するからです。形状は誰もがマネをすることができるようになるのです。
意匠権の期限は、デザインの言語を新しい世代に残すため
では、なぜ25年経つと意匠権が消失してしまうのか。
ずっとデザインを保護してあげるべきではないのか。
意匠権が消失するルールは、デザイナーに厳しいようにも思えますが、もっと長い目で見たときに大きな意義があるのです。
意匠権で一定の期間デザイナーを保護し、新しいデザインを作ることへの意欲を盛り上げることは大切ですが、保護期間が切れるようにすることで、そのデザインを基にした新たな製品が市場に登場しやすくなります。
例えば、セブンチェアのような名作が出た後に、そのデザインを誰も使えなくなるとすると、デザインの歴史とともに、どんどん使えるデザインの言語が制限されていき、先細りになっていくのです。すべてのデザインは、全くゼロから発想されたものではなく、必ず歴史の文脈を持っています。セブンチェアもモダンデザインの系譜の中にありますし、セブンチェアを土台に、さらに進化したデザインを作ることもごく自然な創作活動です。
そんな時に、このデザインは昔作った人がいるからダメ、というルールにしてしまうと、新しい世代がデザインで自由に発想できなくなってしまいます。意匠権に期限を設けているのは、デザインの言語を後世のデザイナーに残すためのもの。デザイナーに厳しい競争を課しているわけではなく、次の世代にデザインの可能性を残すためのものなのです。
そして消費者のため
そして我々消費者のためのものでもあります。
意匠権が切れて誰もがそのデザインを模倣できることを、デザインがパブリックドメインになるといいます。パブリック=公のものになるという意味です。デザインがデザイナーのものから、公のものになることを意味します。
デザイナーが権利を守られるということは、消費者にとってはそのためのコストを支払うことに他なりません。私たちは、正規品を購入することで、所有する喜びを買うことも選択できます。
一方、デザインがパブリックドメインになれば、リプロダクトチェアを購入することで、より気軽に素晴らしいデザインを使う喜びを買うことも選択できるのです。
くすりの世界では、先発薬の権利が切れると、成分が同じジェネリック薬品が市場に出てきます。ジェネリック薬品は消費者に確実に喜ばれており、だれもが健康になる効果を享受できます。一方でやはり入念な研究を経て開発された先発薬の方が良いという人はそれを選ぶこともできます。
デザインの世界でも、ジェネリック家具=リプロダクト品が、選択肢として定着しつつありますが、より大きな市場になっていくことを期待しています。
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