2024/02/26 12:50
スワンチェアのリプロダクト品は、十分に持つ喜びを感じられる逸品
アルネ・ヤコブセンの代表作、スワンチェアのリプロダクト品について検証し、正規品との比較を行いました。その結果、リプロダクト品でも十分に持つ喜びを感じられる逸品であることがわかりました。リプロダクト品は、オリジナルのスワンチェアが持つ美しい曲線や独特のフォルムを忠実に再現しています。インテリアにこだわりたい方にも十分な満足感を感じられるものです。
ただし、いくつか違う点もあります。インテリアにおいて何を重視するかによって、この相違点を許容するかどうかが変わってくると思いますので、しっかりと比較してみました。
「すわる芸術」スワンチェア
スワンチェアは、1958年にデンマークの著名な建築家兼デザイナー、アルネ・ヤコブセンによってデザインされました。この椅子は、コペンハーゲンのラディソンSASロイヤルホテルのために特別に設計されたもので、ホテルのロビーおよびラウンジエリアを飾るために作られました。スワンチェアは、その名の通り、白鳥が羽を広げたような優雅で滑らかな曲線を持つデザインが特徴で、20世紀のモダンデザインを代表するアイコニックな作品として、世界中で高く評価されています。
ヤコブセンは、スワンチェアのデザインにおいて、新しい技術と素材を駆使しました。当時としては革新的だった成形合成樹脂を使用して、座面と背もたれを一体成型することで、継ぎ目のない滑らかなフォルムを実現しました。また、スワンチェアは、その快適さにも定評があり、座る人の体を優しく受け止めるデザインは、今日でも多くの人々に愛され続けています。
スワンチェアは、その発表以来、モダンデザインの象徴として、オフィス、ホテル、住宅など、さまざまな空間で採用されています。その洗練された美しさは、時間が経過しても色褪せることがなく、現代のインテリアデザインにおいても、依然として重要な位置を占めています。
ただ、正規品の価格は気軽に購入できる価格ではありません。
フリッツ・ハンセンで購入する場合、通常のシート生地で50万円台。レザー張りにすると60万円台になります。
※フリッツハンセン
リプロダクト品は有力な選択肢ですが、リプロダクト品でも数万円はしますし、非常に大きい家具ですので、気に入らないからと言ってすぐに処分するのも大変です。粗悪なリプロダクト品を選んでしまわないよう、きちんとしたものを選ぶ必要があります。
リプロダクト品でこれほどまでに喜びを感じたのはスワンチェアのリプロダクト品だけ
これまで、名作チェアの正規品とリプロダクト品を購入してきましたが、リプロダクト品を購入して最も大きな喜びを感じたのはスワンチェアでした。リプロダクト品は、正規品のデザインの価値を引き継いでいる素晴らしいイスに変わりはないのですが、やはり正規品と比べると、愛着に多少差が出るのは仕方のないことです。
その点、スワンチェアのリプロダクト品は、「このイスをちゃんと大切に扱おう」という気持ちになり、しっかりと所有する喜びを感じられるものでした。
それには理由があります。
1つ目に、白鳥が羽を広げたような美しい曲線が、リプロダクト品で表現されていること。スワンチェアで最も大切な部分が、きちんと再現されているので、スワンチェアのデザインを購入したという欲求を十分に満たしてくれます。
2つ目に、重厚感です。スワンチェアは、曲面で構成されたやわらかい形をしていますが、脚の部分は一本の軸で支えられているため、しっかりした作りになっています。当然リプロダクト品でもこの部分はしっかり作られていて、その重厚感が、所有しているという気持ちを際立たせてくれます。
スワンチェアのリプロダクト品は正規品にかなり似ているが、いくつか違いも
スワンチェアの正規品とリプロダクト品はどれくらい違うのか、実際に購入して比較をしてみました。
・正規品:フリッツ・ハンセン社の正規品(グリーン・張替え済み)
・リプロダクト品:58,000円のリプロダクト品(ベージュ)
比べてみたポイントは3つです。
- 座面部分のサイズ
- 脚のサイズ
- すわり心地
1.座面の部分のサイズ
まずはセブンチェアの魅力でもある座面から背もたれにあたるサイズを比べてみました。比較したのは6つのサイズです。
=比べてみた結果=
正規品とリプロダクト品でもっとも違っていたのは、全長(A)と座面高(B)です。正規品の方が背もたれの高さも座面の高さも低くなっています。座面の高さについては、座り心地にも少し差があります。正規品はすわると脚がしっかり地面につくような高さです。一方のリプロダクト品は、脚が届かないほど高いわけではありませんが、正規品よりも、足を地面につけたときの余裕がわずかに少ない感覚です。人によって感覚が分かれるところでしょう。
それ以外は正規品とリプロダクト品の差はわずかで、背面幅(C)、くびれ幅(D)、ひじ掛け幅(E)、座面奥行き(F)のいずれも、正規品とリプロダクト品の差は1cm以内でした。
パッと見た印象でも、座面の高さは違いが判りますが、それ以外の点で目立った差はありません。スワンチェアの特徴的な座面において、正規品とリプロダクト品はかなり近いという印象です。
2.脚のサイズ
スワンチェアの脚はシンプルに見えますが、4本脚ではなく1本脚で立っているという点が特徴です。全体重を1本で支えるため、大黒柱のような脚と、接地する4本脚で構成されています。
=比べてみた結果=
正規品もリプロダクト品も、接地脚の間隔(A)に大きな違いはありません。
ただ、脚の形状(B)は少し異なっていて、正規品は脚の中間部分の接続部が目立たないようになっていますが、リプロダクト品は黒い樹脂が中央にあり、接続部が目立つようになっています。遠めに見ると特に気になりませんが、違いが明確にわかる部分ではあります。
3.すわり心地
すわり心地については、感想を記載します。
一言で言えば、正規品はソフトな感覚、リプロダクト品はやや硬い感覚です。
正規品については、3層で構成されています。外側が木製、間にウレタン、一番上の部分は柔らかい綿のような素材が使われています。
これらの素材の組み合わせによって、十分な合成と曲面の形状、そして座ったときの柔らかさを実現しているのです。
しかしリプロダクト品は、ウレタン1種類で形作られていて、この素材がすわったときの感覚を形成しています。決して不快になる程の硬さではありませんが、正規品と比べると違和感を感じるかもしれません。
=まとめ=
細かく調べてみると、違う点も見られるスワンチェアの正規品とリプロダクト品ですが、リプロダクト品であっても、スワンチェアのデザインを購入する喜びは、非常に大きいものでした。
座面の高さが正規品よりも高いことは、ラウンジでくつろぐ用途ではなく、リビングや仕事で使う用途と考えれば、むしろ使いやすいシーンが増える良い違いととらえることもできます。
デスクでスワンチェアのリプロダクト品を使っていますが、ちょっと低めのイスという感じがするだけで、全く支障はありません。
正規品になかなか手が出ない、あるいは正規品を手に入れたけれど、日常使いはリプロダクトにしたいという人に、この満足をぜひ感じてほしいと思います。
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